シェアフラワーで花と幸せを循環させよう

循環型経済

『フラワーロス』という言葉を聞いたことがありますか?
これは形やサイズなどが規格に合わず市場に出せなかったお花や、売れ残ってしまったお花、イベントで使用されたお花など、さまざまな理由から美しく咲いた状態のまま廃棄することを表す言葉です。こうした課題を解消するため、お花を貴重な資源として*1アップサイクルし、お花が与えてくれる幸福のエネルギーをより多くの人に届ける『“幸せのお福分け”シェアフラワーSTYLE』という取り組みが進んでいます。
ロスからシェアへ。花から生まれる“幸せを循環させるSTYLE”をみなさんにご紹介します。

“幸せのお福分け”シェアフラワーSTYLEでもっと幸せを広めたい

観賞用のお花(花き)は生ものであり、生産や流通の過程で発生するロスは以前から課題となっていました。一説によると日本では年間で10億本を超えるお花が廃棄されているといいます。さらに花きの大きな需要を占める結婚式などの式典やイベントでは、まだ美しく咲いたままの花がその日限りで役目を終えてしまうことも珍しくありません。

そこで、横浜市では新たなグリーン社会の実現に向けたプロジェクト『地球1個分で暮らそう STYLE100』(以下、STYLE100)における新たなSTYLEの一つとして、ロスフラワー(綺麗な状態で廃棄される花のこと)に新たな命を吹き込み、お花と幸せを循環させる取り組み『“幸せのお福分け”シェアフラワーSTYLE』を始めました。
『“幸せのお福分け”シェアフラワーSTYLE』は、結婚式やホテルなど、さまざまなお祝いの場で使われた装花を集めてアップサイクルし、幸せがまた新たな幸せにつながる“お福分け”を、市内で展開されるイベント等、多様な形で広げていくアクションです。

5月3日(土)~5月5日(月)にパシフィコ横浜で開催された日本最大級の園芸イベント『横浜フラワー&ガーデンフェスティバル 2025』では、その取り組みの第一弾となる「幸せがめぐる、つながる シェアフラワーリング」が実施されました。
これはSTYLE100と、ウェディング事業を中心に展開し、市内で5つの結婚式場を運営する株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ(以下、T&G)とのコラボレーションによって実現したもの。

T&Gが運営する結婚式場で実際に使用された沢山の花材を、祝福の気持ちをかたちに表現した指輪がモチーフのオブジェ「シェアフラワーリング」にアップサイクルして展示。このオブジェの制作は、来場者ひとりひとりが結婚式場から寄付されたお花の中から好きなものを手に取ってオブジェに挿し、共同で完成させるという来場者参加型で行われました。

パシフィコ横浜にて5月3日から5日まで開催された『横浜フラワー&ガーデンフェスティバル 2025』にて。指輪をモチーフにした大きなリングに来場者が結婚式場から寄付されたお花を飾りつけてフォトスポットに仕上げていきます。

初日の午前中には飾る花がなくなってしまうほど多くの来場者が幸せのお福分けを体験。
「自分の結婚式のときにお花がもったいないと感じていたので、こうやって生かせる取り組みは嬉しい」そんな声も聞こえてきました。

結婚式で幸せに寄り添ったシェアフラワーが、もう一度笑顔をつくってくれる、そんなお福分け。

ロスフラワーからシェアフラワーへ。

会期中にアップサイクルされたシェアフラワーはおよそ3,500本以上に。イベント終了後は草木染めの工房へと運ばれ染料として生まれかわりました。

シェアフラワーから生まれた染料で染めたハンカチとTシャツ。
花本来のやさしい色味がにじむように伝わってくる、そんな自然の美しさを感じる染め物へと生まれ変わりました。

大盛況のブースを前にT&Gでフラワーコーディネーション統括部長を務める南方さんは「こんなに喜んでいただいている光景を見ることができ本当に嬉しいですね。」と笑顔で話します。

株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ フラワーコーディネーション統括部長 南方浩子さん

南方さん:T&Gのサステナビリティな活動においては“幸せがめぐる”というキーワードを大切にしています。これまでたくさんの結婚式をお手伝いしてきましたが、幸せな感情を結婚式だけで完結させず、形を変えて伝え、めぐらせることで、よりたくさんの人を幸せにできると感じています。今回お声がけいただき花を提供しましたが、このお福分けは“幸せがめぐる”を具現化したものだと実感しました。今後もこのような活動を続けていけたらと思います。

STYLE100からはじまる新しいシェアフラワーのスタイルづくり。この取り組みを通じて、お花のいのちや、再活用のアクションへの関心がさまざまな人に伝わり、お花の新しい価値を認識しサステナブルな未来が広がっていく。そんな可能性を感じた会場の風景でした。

まだ咲いているのに廃棄される「もったいないフラワー」を救いたい

“幸せのお福分け”シェアフラワーSTYLEにお花を提供してくれたT&Gは1998年創業、全国で57の直営の結婚式場を運営し、年間約12,000件の結婚式をプロデュースしています。これまでも結婚式にまつわるお花の再利用にアプローチしてきたそう。花の仕入れ先であるプランツパートナーと連携し、生産現場や市場で破棄されてしまうお花や結婚式場で役目を終えたお花を「もったいないフラワー」として活用し、多様な方法でその魅力を最後まで生かしています。その詳しいお話を伺うため、T&Gの結婚式場、Marine&Walk YOKOHAMA内に位置する『BAYSIDE GEIHINKAN VERANDA minatomirai』を訪れました。

取材に訪れた日にエントランスで迎えてくれたシェアフラワー。2週間前に行われた結婚式で会場を彩ったお花とのこと。

Marine&Walk YOKOHAMA内に位置するBAYSIDE GEIHINKAN VERANDA minatomirai。全フロアオーシャンビューの贅沢かつ自然に包まれるような結婚式場です。

T&Gにサステナビリティ推進室ができたのは3年前ですが、以前から社員ひとりひとりが「自分にできるいいこと」として、省エネルギーやリサイクルなどに取り組んでいたそう。推進室ができたことにより、その事例が集約され、さらにサステナブルな取り組みに対する意識も高まっていったといいます。
2017年からは全国で「T&Gキッズプロジェクト」を実施。子どもたちに結婚式場の仕事を経験する学びの場として結婚式場を開いています。ロスフラワーを使いブーケをつくる体験は子どもたちに人気のコンテンツだそう。

“T&Gキッズプロジェクト”の様子。フラワーコーディネーターの仕事を体験しながら、資源を大切につかうことを子どもたちに伝える取り組みにロスフラワーが生かされています。

結婚式の会場装花を思い出とともに閉じこめたキャンドルのプロデュースも。

廃棄されてしまうお花を“幸せのお福分け”としてアップサイクルするシェアフラワーのように、結婚式という枠を超えて、お花を中心にたくさんの人がつながり、そのいのちを最後まで大切にする取り組みは確実に広がっています。

シェアフラワーで、資源とポジティブな気持ちが社会を巡る

ロスフラワーをシェアフラワーに。一般的に1回の結婚式で300本から400本の花がブーケや会場装花として幸せな時を演出するそう。あらためて、T&Gがそのお花を活用し、徹底してフラワーロス削減に取り組む理由を同社のフラワーマネージャー、服部さんに伺いました。

フラワーマネージャーの服部有華さん

服部さん:T&Gでは自社が運営する結婚式場の多くに花を保管し作業をするスペースがあり、式場の花の準備も自社スタッフでおこないます。だからこそ、わたしたちの花に対する想いは深く、フラワーロスは身近な課題であるとともに責任も感じます。

BAYSIDE GEIHINKAN VERANDA minatomirai内にある花の作業場。取材日には翌日にひかえた結婚式のためスタッフさんがてきぱきとお花を準備する光景も。

服部さん:結婚式に携わる私たちにとって花はなくてはならないものです。花を最後の最後まで生かすということは私たちだからこそできるサステナブルな取り組みだと思っています。

これから先、生花を結婚式で使うことが環境負荷である、そうとらえられる時代がきたとしたら。それは、美しさや幸せな想いを届けるお花の価値が失われてしまうことになります。そうならないためにも、お花の未来が持続可能であるためにできることを。

服部さん:シェアフラワーは幸せを誰かにつなげていくアクションです。彩る、眺めるだけではない新しい花の価値を伝えながら、ロスフラワーではなくシェアフラワーが当たり前になる社会づくりに、わたしたちも伴走していけたらいいなと思います。

規格外の花も魅力的に見せる。おしゃれでかっこよく、そして幸せが伝わるからこそ続いていく、それがT&Gのシェアフラワーです。

廃棄されるお花に再び価値を与えて、幸せを循環させるシェアフラワー。
結婚式という人生の特別な日に寄り添った花は、その役目を終えたあとも子どもたちの学びとなったり、まちのイベントで誰かの心を温めたり。そんな優しい循環が、“幸せのお福分け”シェアフラワーSTYLEやT&Gの取り組みに息づいていました。「好きな花を大切にする気持ち」が、誰かの笑顔や学びへとつながっていく。シェアフラワーという循環に、あなたも参加してみませんか?

*1アップサイクル 本来廃棄されていたものに新たに価値を付加し、再利用すること

【情報】
地球1個分で暮らそう STYLE100:https://style100.city.yokohama.lg.jp/
T&G テイクアンドギヴ・ニーズ:https://www.tgn.co.jp/
横浜フラワー&ガーデンフェスティバル2025:https://yfg-fes.jp/

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