オープンガーデンで人と自然とつながろう

生物多様性

大都市でありながら、自然豊かな緑に囲まれた都市、横浜。市内では毎年春に、さまざまな場所で『オープンガーデン』という取り組みが行われています。日頃からガーデニングを楽しむ家庭や団体が、丹精込めて育てた庭を一般の方に公開しているのです。

人生と共に作り上げた大きな庭も、まだ始めたばかりの小さな庭も。それぞれの暮らしや趣向が表れている中に共通していたのは、『オープンガーデン』という開かれた庭を通して、人との出会いや自然とのつながりを豊かに楽しむ姿でした。

開かれているからこそ、地域の中で出会いや循環が生まれる庭

最初にお会いしたのは、旭区の徳久さんご夫妻。ご結婚されてから48年、長年の暮らしと共に庭も年数を重ねていきました。

徳久 和彦さん・豊子さんご夫妻。

もともと園芸は趣味ではなかった、というお二人。しかし、雑草しか生えない荒れた土地を、年月をかけて植物が育つ豊かな土壌へと変え、庭を作り上げていったと語ります。また、近くの施設の車いす利用者など、誰でも自由に鑑賞できる回遊式の道を作り、人が庭と接しやすいよう少しずつ工夫を重ね続けているとのこと。

回遊式の道があり、自然を豊かに楽しめる徳久ご夫妻の庭園

和彦さん:家を建てた当初、この周辺はゆるやかな斜面の原野だったんです。石を掘り起こして土作りをするところから始めていきました。庭は誰かに早く作れと急かされるものではありませんから、どういう形で作っていくかを自分たちのペースで一生懸命考えてきたんですね。高い塀をめぐらした家ではないので、結果として、隣接した公園の樹木を採り入れた独特な形の庭になりました。

散歩中の人や地域の福祉ボランティアの仲間など、多くの人が集う庭。

庭の楽しみ方は夫婦それぞれ。いけばな草月流の先生として長年市内各所で指導している豊子さんが植えるのは、お稽古用の花材となる植物。和彦さんは庭の中心部分で野菜を育てています。

豊子さん:主人はちょうど50代後半ぐらいから菜園を始めました。もうじき定年で時間があるだろうから、真ん中の一番日当たりがいいところを畑にすれば退屈しないだろうって。

和彦さん:どちらかというと、自給自足じゃないけれど、災害時も含めてあったらいいなと思う実用的な野菜作りをやってるだけ。

ジャガイモ、小松菜、ナス、トマトなどさまざまな野菜を育てている。

ずばり、庭のある暮らしの良さとは何なのでしょうか。

和彦さん:ちょっとかっこよく言えば、あの緑も花の赤も何もかも、コントラストの美しさがあるんですね。季節ごとにどんどん色合いが変わって、その植物の変化に合わせて、飛んでくる鳥や昆虫も変わっていく。自然の一体的な営みの素晴らしさを、この庭を通してとても感じます。

『オープンガーデン』の参加を機に、開催時期の4〜5月に咲く花をたくさん植えたそう。

植物が身近にあることで、それまでは気づかなかった気候のことにも敏感に。人間よりも植物のほうが繊細だと感じるような出来事もありました。

豊子さん:引っ越してすぐの頃、中区のお花屋さんで買ったカシワバゴムという観葉植物を植えたら、次の日から枯れ始めたんです。それをお花屋さんに伝えたら、「中区なら大丈夫ですが、旭区では枯れてしまいます」と。中区より旭区は標高が高く、気温が低いことが原因だとわかって驚きました。

庭を開放したことで、草むしりをしているときにお散歩で来た人と会話や交流が生まれることもあると話す徳久さんご夫妻。また、人との出会いだけではなく、地域の資源循環にもつながっています。

和彦さん:庭にある石や樹木の一部は、地域の方が「家で要らなくなったので使ってもらえませんか」と声をかけてくださり、譲り受けました。ここは、地域の方の協力で生まれた庭でもあるのです。植物も地域内の大切な資源として循環させ、リサイクルを通じて有効活用していきたいという思いがあります。

スモールでも庭は楽しめる!子育てファミリーに活気をもたらした庭づくり

次にお会いしたのは、瀬谷区の星野さん。ご夫婦でデザイン事務所『アトリエデコ』を営みながら、お子さん二人と暮らしています。

ジューンベリーの木が聳える一軒家で暮らす星野さんご家族。

自宅兼アトリエで働く仕事柄、住みながら自宅の一部を開放する“住みびらき”をいつかしたいと考えていた星野さん。『オープンガーデン』を知ったのは、デザイナーの仕事でその冊子を作ったことでした。そして、もし自分がやるなら大きな庭よりも小さな庭をやってみたい、と興味を持ったといいます。

星野さん:当時は、『オープンガーデン』の全会場を撮影する仕事も受けていました。そこには本当に小さなプランターが1〜2個だけの庭もあって。こんなにささやかな庭でも、それが集まって盛り上がっているのが素敵だなと思いました。

庭作りを始めてから今年で2年目。ポイントは、いかに子育てと両立させるかだと話します。

星野さん:まずはやってみようと始めたものの、家を建てた後にすぐ子どもができて、庭の手入れができずに荒れ放題になってしまったんです。そこで、育てやすい宿根草と一年草を組み合わせて、忙しい中でも維持できるようなローメンテナンスな庭にしようと思いました。子どもが一緒に楽しめるように、チューリップなどわかりやすい花も一緒に植えています。

手入れは子どもの遊びを見守りながら週1回やるかどうか。費用も今年かかったのは2000円だけ。

庭を通じて、地域とつながりのある暮らしはどのように始まっていったのでしょうか。

星野さん:花壇が道路に面しているので、お花の手入れをしていると通りかかった人に話しかけられることが多くなりました。ちょっとした挨拶から会話が生まれたり、季節のことを話したりして、それがとても豊かな時間だなと思います。

「近くに公園があるので、犬を連れている人もたくさんいらっしゃいます」と星野さん

家のシンボルツリーにジューンベリーの木を選んだのには、こんな理由がありました。

星野さん:春は桜の時期に白い花が咲いて、夏には真っ赤な実がなって、秋は紅葉が綺麗なんですよ。そして冬には落葉してまた春が来るように、四季ごとに大きく変わっていくのが素敵だなと思って植えたので、日々楽しく過ごしています。

仕事場から見える庭とグリーンは癒しになっている。

土や草に触れてストレス解消、仲間との活動は生きがいに

最後に訪れたのは、瀬谷区の『花まる育苗センター』。横浜市の土地に区が支援して建てたビニールハウスで、区民ボランティアの皆さんが活動しています。30人以上の地域の方々が協力して、ここで苗を育てているのです。

『花まる育苗センター』の皆さん。

通年行われる活動は月2回の活動日と、交代で行っている水やりなどの管理。

『花まる育苗センター』の活動に参加したきっかけは、たまたま通りかかって興味を持ったり、定年退職を機に何か始めてみようと思ったりと、皆それぞれです。あるボランティアの男性は、こんなことをお話ししてくれました。
「当時、区の広報誌にここのボランティア募集が出ていました。そこで、うちから5分もかからないところですから、やらせてもらおうと思って申し込んだんです。そうしたら地域の知った顔の方が何人かおりましてね、まるっきり初めての場所という感じがしなかったんです」

長い人は10年以上も『花まる育苗センター』の活動を続けている。

横浜市の『よこはま花と緑の推進リーダー育成講座』の研修に参加したり、ボランティアの中で詳しい人に教えてもらったりしながら、種から植物を育てるノウハウの学びを皆で深めていく参加者たち。作った苗は地域の小学校や保育園などに寄贈して、花壇に使用されています。

「種から苗を育ててみたい」と、育苗そのものに興味を持って参加した人も多い。

みんなに連絡をする人、草取りが好きな人、力仕事に励む人など、見事なチームワークで活動する。

時には保育園に出向いて、育てた苗を園児たちと一緒に植えることもあるそうです。ボランティアの女性は、こんなことをお話ししてくれました。
「ずいぶん前に終えた子育てを思い出させてくれるんです。愛らしい園児たちと一緒に作業する時間は、本当に楽しくて心が和みます」

他にも、「土や草にさわることがストレス解消になる」「ここへ来て皆さんとおしゃべりして笑って帰るのが、やっぱりとてもいいことだと思います」「和気藹々と活動できることが、年を重ねてくると幸せ。それが生きがいですね」と、口々に喜びを語り合いました。

『花まる育苗センター』の活動は「楽しい」「学びが多い」「来ると息抜きになる」!

自然とつながり、人ともつながる

今回の取材で見えてきたのは、皆さんがガーデニングを通じて自然を身近に感じ、暮らしを豊かに楽しんでいる姿でした。それだけではなく、庭を開いたり、ボランティア活動に参加したりすることで交流が生まれ、それがきっかけで地域の温かなつながりも育まれていました。

広い庭や専門的な経験がなくても、気軽に始められるのがガーデニングの魅力です。あなたも『オープンガーデン』という形で、地球や自然をより身近に感じてみませんか。

『花まる育苗センター』の担当を務める瀬谷区の職員さんとボランティアの人々。

【情報】
・旭オープンガーデン
https://www.city.yokohama.lg.jp/asahi/shokai/2027engeihaku/opengarden.html
・瀬谷オープンガーデン
https://www.city.yokohama.lg.jp/seya/shokai/gaiyo/midokoro/seyaopengarden.html
・港北オープンガーデン
https://www.city.yokohama.lg.jp/kohoku/shokai/bunkakanko/opengarden.html
・栄区オープンガーデン
https://www.city.yokohama.lg.jp/sakae/kurashi/machizukuri_kankyo/midori_eco/hanasakusakae.html

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