プロギングで街をきれいにしよう
循環型経済
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横浜・山下公園では、地域のお店や企業と協力しながら、街をきれいするアクションのひとつとしてプロギング(走りながらゴミ拾いをするアクション)を開催しています。北欧から始まった新しいフィットネスでもあるプロギングで街をきれいにするスタイルに迫りました。
体と心と街をきれいにする「YOKOHAMA PLOGGING」
「プロギング(plogging)」は、2016年に北欧スウェーデンで生まれた、ジョギングをしながらゴミを拾う新しいスタイルのフィットネスです。日本では2018年頃から本格的に取り入れられ、2020年以降は環境意識の高まりやSNSでの拡散をきっかけに全国的に広がりました。近年では、東京・横浜・大阪などの大都市を中心に、プロギングを実施するイベントやボランティア団体も増えています。健康づくりと環境保全を同時に実現できる点もプロギングの魅力です。
このプロギングを、「健康の維持、街をきれいにする」というアクションだけに止まらず、地域と人をつなぐハブとして継続的に開催されているのが、「YOKOHAMA PLOGGNGシティ&パーククリーン活動」です。先日、横浜の中でも多くの人が集まり愛され続けている山下公園で実施されたこの活動に、STYLE100チームも参加し、体験してきました。
スタート地点となるのは、横浜・山下公園内のカフェ・レストラン「THE WHARF HOUSE」。約3年前から、プロギングを主催しているといいます。近隣の店舗や企業にも参加を呼び掛けながら、月に一度の開催を目指しており、山下公園を中心にした約4km圏内をプロギングしています。

10月初旬の朝9時。THE WHARF HOUSEの呼びかけに応えて、近隣企業の方々も参加。総勢15名でプロギングが実施されました。

チームに分かれ「燃えるゴミ」「燃えないゴミ」「缶、ペットボトル」など各自が担当の袋を持ちながらジョギング。拾ったゴミはその場で分別します。
プロギングはスポーツという位置付けですが、難しいルールがないのも特徴です。「楽しく、安全に、自分のペースで。」そういったシンプルなことを実践しながら、笑顔でジョギング&ゴミを拾うことを大切にしています。
さらに、「互いを褒める、称え合う。」こともプロギングの欠かせない要素です。ゴミを拾うたびに「ナイス!」「いいね!」など積極的な声掛けをし合うことでよりモチベーションが高まり、気持ちよく走ることができるのです。

声掛けが後押しとなり、足が自然に前へ進むという参加者の声も。
また、今回の活動ではゴミを回収できるカーゴバイク型の自転車「Dumpster CARGO(ダンプスターカーゴ)」が伴走しました。

デンマーク製カーゴバイク”OMNIUM”に大きなボックスを取り付けたダンプスターカーゴ。オリジナルのゴミ回収袋や時にはホウキやトングを携えて、プロギングに伴走できる仕様に。動力は人力のみ。
手元に溜まったゴミをカーゴバイクで回収することで参加者は身軽なまま走ることができます。また、軽トラックのようにCO2を排出することもないので、より環境に配慮しながらプロギングを実施することができるのです。
ゲーム感覚で楽しく実践!地域の企業や仲間とのつながりに
THE WHARF HOUSEを運営する株式会社ゼットン・ディストリクトマネージャーの伊藤直樹さんにお話を伺いました。

株式会社ゼットン・ディストリクトマネージャーの伊藤直樹さん。THE WHARF HOUSEは2023年4月、山下公園の新しい魅力の一つとして開業。レストラン・カフェ・バーベキュー・足湯のサービスで親しまれています。
伊藤さん:もともと、弊社が江ノ島で経営している「Aloha Table 湘南」でビーチクリーンを始めたことが、会社全体としてのクリーン活動につながったきっかけでした。THE WHARF HOUSEも海の近くなので、自然とこちらでもクリーン活動を行うようになりました。
もともと山下公園は清掃業者によって定期的に手入れがされていてきれいだったと伊藤さん。

ほぼ毎日、市から委託された団体が清掃を行っている山下公園。
伊藤さん:山下公園は目の前に海が広がり、みなとみらいが見渡せる最高のロケーションです。ゴミの少ない環境を維持し、この地域をさらにきれいにしていきたいという思いから、最初は店舗スタッフだけで公園周辺のゴミ拾いを始めたんです。

一見きれいに見える公園も、見えない場所にゴミが。たばこの吸い殻や、食べ歩きで捨てられた竹串などが目につきます。
後にプロギングの存在を知り、近隣企業にも声掛けをしながら活動を広げていったと伊藤さんは続けます。
伊藤さん:プロギングの魅力のひとつは「地域の人々をつなぐ」ことだと思っています。「ナイス!」と声をかけあったり、世間話をしたりしながら行うため、自然と知り合いが増えるんです。プロキングというアクティビティを地域の人同志で楽しむことが、結果的に街を美化しようという意識も育んでいると感じています。

「横濱ハーバー」でおなじみの株式会社ありあけや、横浜ビールなど、地域に根ざした企業からの参加者も増えています。
伊藤さん:プロギングを通じて地域や街に貢献することはもちろん大切ですが、私たちが何より願っているのは、山下公園が清掃活動によってもっと魅力的になり、訪れる方々が「この公園、きれいだな」「素敵だな」「楽しいな」と感じてくれることです。
カーゴバイクの登場でますます快適にプロギングが実施できるようになったので、今後も積極的に近隣と連携しながらクリーン活動を継続していきたいと思います。
自転車でゴミ拾いをもっと面白く楽しくデザインする
今回のプロギングに用いられたダンプスターカーゴは、まちづくり事務所「about your city(アバウトユアシティ)」の自主プロジェクトとしてデザインされました。代表の小泉瑛一さんは「この自転車は街を愛する人たちを応援する装置なんです」と語ります。

まちづくり事務所「about your city(アバウトユアシティ)」代表の小泉瑛一さん。「市民駆動型デザインで都市をアップデートする」をモットーに、まちづくりに関する様々なプロジェクトを手掛けています。
小泉さん:コロナ禍の2020年頃に、密を避けた「屋外飲み」が流行し、横浜の繁華街に散乱ゴミが急増してしまったことがダンプスターカーゴをつくったきっかけでした。街の環境をよくする方法を模索する中で、プロギングと出会ったんですが、大量のゴミを運搬できるカーゴバイクがあれば、人が走る速度に合わせて移動できるし、サポートに最適だと思い、専用のダストボックスなどをデザインしたんです。
カーゴバイクと共にプロギングが行われる事例はまだ少ないそう。しかし、ダンプスターカーゴを制作した2022年以降は、スポーツシューズのOn Japan、横浜ビール、FM Yokohamaといったさまざまな企業のプロギングイベントとコラボレーションしています。
ゴミ拾いはひとりひとりが街を手軽にケアできるアクション
小泉さん:私たちはまちづくりをデザインする会社ですが、近年は公共空間やストリートの利活用が盛んになっていると感じています。例えば、道路を封鎖して人や自転車を中心としたマルシェを開催したり、街のちょっとした隙間に椅子を設置して座れるようにしたり。ただ、それらは街になんらかの手を加えたり、作り替えたりするアクションです。私自身もそういった活動をしてきましたが、それと並行して「街をケアすること」も大事だと感じるんですね。

「街をケアする」そのツールとして活躍するカーゴバイクを広めたいと小泉さん。
小泉さん:自分たちの街を自分たちでつくっていくためには、やはりメンテナンスやケアが欠かせない。そして、その中で一番手軽にできるケアが「ゴミ拾い」ではないでしょうか。今後も、この街のケアをダンプスターカーゴと一緒にもっと楽しく、もっと面白くデザインできたらいいなと思っています。
街に住む人、関わる人、ひとりひとりが街のケアのプレイヤーになれるスポーツ、それがプロギングです。
THE WHARF HOUSEでは、「ファミリー×プロギング」や「観光×プロギング」など、今後も開催を検討していくそうです。「ゴミ拾いが楽しいから続けられる、楽しいが続くから、きれいが続いていく」。そんなプロギングの輪の広がりにあなたも参加してみませんか?
※横浜市の公園内では自転車の乗り入れはできません。
本取材では、カーゴバイクは公園内を押して移動し、プロギングの伴走については公道のみで行いました。
【情報】
THE WHARF HOUSE https://wharfhouse-yokohama.zetton.co.jp/
About your city https://aboutyourcity.jp/
日本プロギング協会 https://plogging.jp/