直して、長く、使っていこう

循環型経済 生物多様性

消費の祭典「ブラックフライデー」の裏側で、服や日用品など、暮らしに欠かすことのできないものを「直して使う」というムーブメントが横浜の港町から広がり始めています。

衣類店、メガネ店、鞄店など、個性溢れるお店がブランドの垣根を超えて集まり、開催されたのは、リペアとメンテナンス、アップサイクルをしながら街を巡るイベント「Fix it Circuit(フィックス・イット・サーキット)」です 。

せっかく作った大切なアイテムだから、大切に長く使ってほしい

横浜公園から横浜港大さん橋国際客船ターミナルへ延びる大桟橋通りは、古い建物が残る風情ある街並みと、みなとみらいを一望できる絶好のロケーションが魅力で、一年を通して多くの観光客が訪れる人気スポットになっています。

そして、この通りのもうひとつの大きな魅力が、丁寧なものづくりや心のこもったサービスを長年にわたって提供しているお店の存在です。

特筆すべきは、このエリアのさまざまなお店がただ商品を売るのではなく、「直して使う」という文化を大切にしているということです。

そうした文化を、街全体の文化として広げていきたいという想いから始まったのが「Fix It Circuit(フィックスイットサーキット)」です。

2025年11月29日、30日の2日間で初開催されたFix It Circuit。名前の由来は“直す(FIX IT)” と “お店を巡る(CIRCUIT)” 、さらに “街のつながりを循環させる(CIRCULAR)” を組み合わせたもの。新しいチャレンジを象徴する造語です。

その名の通り、街の各所にある店舗がリペアやメンテナンスを提供し、来場者は街を巡りながら、持参したアイテムを修理したり、アップサイクルできるイベントです。

イベントの呼びかけ人である尾野村嘉洋さんに開催のきっかけを伺いました。

パタゴニア横浜・関内店スタッフの尾野村嘉洋(おのむら よしひろ)さん。

尾野村さん:2025年1月に、東京都内でサーキュラーファッションの楽しさを体感するイベントが開催されました。私はボランティアスタッフとして参加していたのですが、勤務しているパタゴニア横浜・関内店の近くにある土屋鞄製造所とBLUEBLUE(聖林公司)のスタッフの方も参加されていたんです。大桟橋通りにある3店のスタッフがサーキュラーファッションをテーマにした場にいたことから、私が「このようなイベントを大桟橋通りでもやりませんか?」と提案したことがFix It Circuitのきっかけでした。

もうひとつ、ブランドの垣根を超えるきっかけになった尾野村さんのパタゴニアのバックパック。壊れるたびに他ブランドの知り合いのスタッフに修理をお願いした結果、様々なブランドが入り混じる唯一無二のバックパックに。この経験を誰でも体感できるイベントを目指したそう。

尾野村さん:企画を進める中で、実はこの地域には リペアやメンテナンスを行っているお店がたくさんあるということに気がつきました。スタッフやお客様にリペアの文化が浸透しているので、互いに連携することで、「直して使う」という価値観をより幅広く発信できると感じたんですね。

イベントでは、洋服や眼鏡などのブランド8店舗と飲食店3店舗が参加。この日のために用意された魅力的なコンテンツで街を盛り上げました。

象の鼻パーク内にある「横浜ロータス」では、パンの製造工程でのあまり生地や残ってしまった生地を活かした「おしくらパン」を販売しました。こちらのパンは蒸しパンの様な雰囲気のリベイク商品で、お越しになった皆様興味を示される方が多くいらっしゃいました。

地域のお店が手を組み世の中に提案する新しいファッションの祭典Fix It Circuit

店内で革財布のメンテナンスを自身で行えるサービスを無償で提供。道具の貸し出しやスタッフによるお手入れのアドバイスなどを通じてメンテナンスに親しんでもらい、自分の持ち物に愛着を持ってもらおうと企画したそう。

横浜店店長の田中聡さんにお話を伺いました。

TSUCHIYA KABAN 横浜店店長の田中聡さん。

田中さん:今回のイベントのテーマでもある「直して長く使う」は弊社の理念でもあり、とても共感できたので参加しました。はじまってみると双方のお客様がそれぞれのお店を巡るという新しい循環が生まれていると感じています。これをきっかけに土屋鞄製造所の理念やサービスを知ってもらえれば嬉しいですね。

TSUCHIYA KABAN CRAFTCRAFTS部KABAN課の大西俊明さん。

大西さん:弊社は子どものランドセルづくりからスタートした会社です。入学から卒業までの6年間使うことが約束された商品ゆえに修理は必至のメンテナンスなんですね。修理を依頼されたランドセルの中に、「壊してごめんなさい」というお子様からの手紙が入っていたり、修理してお戻しをすると折り紙でつくったメダルやお礼状を頂くことがあります。そんなやりとりが生まれるのも、直すという行為あってのことだと感じますし、商品がお客様の手に渡った後もお直しをして喜んでいただく姿が見えることは職人冥利につきると思っています。もちろん、大人向けの商品でも同じ気持ちです。新しく買う前に直して使うという選択肢がもっと増えるといいですよね。

購入者特典として回せるカプセルトイの中身は、鞄製作で出た端材から生まれたクリスマスモチーフのオーナメント(季節限定)。遊び心もありつつ、革の端材を最後まで活かす取組です。

次は大桟橋方面へ向かいましょう。1996年から大桟橋のたもとにお店を構えるBLUEBLUE YOKOHAMA に到着します。
BLUEBLUE では、購入したデニムに 永久保証をつけてメンテナンスを行うサービスを提供しています。

デニムを始め、インディゴブルーにこだわった商品が並ぶBLUEBLUE店内。

BLUEBLUE YOKOHAMA店長の秋本翔太さん。

秋本さん:普段から自社製品に関してはメンテナンスであったり、自社のブランドロゴを刺繍できるイベント等を過去に行なってきましたが、今回初めて、他ブランドの製品でも刺繍のサービスを行いました。例えば、箪笥に眠ってしまったお気に入りの服にひと手間加えることで新しい愛着や楽しさを届けたいという思いからです。

秋本さん:今回、他ブランドのものをお持ち頂いて、BLUEBLUEのロゴ刺繍を入れた事例もあったのですが、一着の中にふたつのブランド名が施された“セルフダブルネーム”になっていて、おもしろい企画になったと感じました。刺繍によるさりげないアップサイクルが唯一無二のものを生み出し、それが満足感につながることで、より物を大切にしたいという気持ちが芽生えるきっかけになりますよね。

セルフダブルネームのジャケット。Fix it Circuitでしか生まれないコラボレーションです。

衣服と一緒に、想いを纏う。世界に一着の特別なアイテムに

BLUEBLUEから歩くこと数分。大桟橋通りでひときわモダンな建物、ジャパンエキスプレスビル2階でビンテージの眼鏡を中心に取り扱う「素敵眼鏡MICHIO」にお邪魔します。

素敵眼鏡MICHIOは、店主MICHIOさんが20年に渡りアメリカの古着の買いつけを手がける中で、趣きのある眼鏡もコレクションとして収集したことが始まりだそう。9年前から大桟橋通りにて店舗を展開しています。

MICHIOさん:ビンテージの眼鏡を扱っていると、これまでにも丁寧に扱われてきた痕跡を感じることがあるんですね。「ものを大切にする」という気持ちを抱いたときから、その品に“魂”のようなものが宿る感覚があります。今回のイベントはものを大事にしながら、近所のお店とのつながりを育むような、昔ながらの“顔の見える関係”が復活していく感じも面白いなと思いました。

眼鏡のリペア、調整、レンズ交換などブランド問わずメンテナンスをしてくれます。

街中へ戻り、パタゴニア横浜・関内店へ。
パタゴニア横浜・関内店では毎月1回、他ブランドのリペアも受け入れる「Fix It Weekend」を開催しています。今回のイベントでは、リペアに加えてFix It Circuitの象徴となるフラッグ作りのワークショップを開催。子どもたちがミシンに触れるきっかけにもなっていました。

子どもたちが、Fix It Circuit参加店舗から提供されたハギレを使い、縫い合わせたり、飾りつけをした小さなパターンを作成。組み合わせることで大きなフラッグをつくるというワークショップ。イベントを重ねる度、完成に近づいていくそう。

パタゴニア横浜・関内店でリペアを担当する岡田睦さん。

岡田さん:リペアセンターで仕事をしているとお客様の顔が見えづらいのですが、こうやって直接やりとりできる場があると、どんなストーリーがこの服にはあるのかを聞けるのことが嬉しいですね。直して、大事なものがもう一度使える喜びを共有できるのがリペアの良さだと思います。

2024年12月、IDEAS FOR GOODが手がけた初のオリジナルショートドキュメンタリー『リペアカフェ』をパタゴニア横浜・関内店で上映。リペアすることで街や人がつながるストーリーは、Fix It Circuitのヒントになっているそう。

日本大通りに面したmass×mass 関内フューチャーセンターでは、LIVRER YOKOHAMAによる洗剤の量り売りと洗濯ワークショップ、そして、洋服や革製品のハギレでポーチをつくるteteのアップサイクルワークショップが開催されていました。

LIVRER YOKOHAMAのスタッフによる洗濯の実演。帽子の洗濯方法に皆、興味津々です。

tete代表のフルタサワコさん。

フルタさん:ブランドとして、ものを作り続けることは、ゴミを増やし続けることにもつながっていると思うんですね。新しいものを作る傍らで、素材をもっと生かしてゴミを増やさない取組を浸透させていくことが一番大事だなと感じています。
アップサイクルやリペアの文化が広がり、ひとつのムーブメントになっていけば、
みんなの意識も自然と共有されていくと思うので、私は私が今できることをしていこうと思います。

このほかにも、横濱帆布鞄英一番街本店のリペア相談、鎌倉隙間版業によるシルクスクリーンなど、自分だけのお気に入りが生まれる、そんな特別な2日間となりました。

自分で縫う体験をきっかけにリペアの楽しさを伝えたい。

ものとの関係を見つめ直す

Fix It Circuitのインスタグラムには、「YOKOHAMA Fix It Circuitは直すことを通してものとの関係を見つめ直す日です」
というメッセージが掲げられています。

タッチひとつで新しいものを簡単に購入できるようになった現代だからこそ、愛用している品をリペアしながら大事に使っていくことの価値が見直されています。高級品でなくとも、人の手が加わることで、豊かさが生まれるのです。Fix It Circuitはそのきっかけを与えてくれるでしょう。

【情報】
Fix It Circuit https://www.instagram.com/fix_it_circuit/?hl=ja
リペアカフェ https://ideasforgood.jp/documentary-repair-cafe/

【参加ブランド・団体(instgram)】
・鎌倉隙間板業 @diawill_works
・素敵眼鏡MICHIO @sutekimeganemichio
・TSUCHIYA KABAN 横浜店 @tsuchiya_kaban
・tete @sawako_furuta @tete.leather
・BLUEBLUE YOKOHAMA @blueblue_yokohama
・パタゴニア横浜・関内  @patagonia_yokohama
・LIVRER YOKOHAMA @livrer_japan @sentaku_brother
・横濱帆布鞄英一番街本店  @045yokohama_canvas_bag
・Gold Chillin’ @goldchillin
・SDN-クラフトビールとワインとサンダル @sdn_yokohama
・mass×mass @mass.x.mass
・Circular Yokohama  @circular_yokohama
・cetana works @cetanaworks

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