あたらしい感性とアイデアで未来を描こう
生物多様性

次世代を担う若者が参加して、議論し、アクションを起こすきっかけとなるプラットフォーム「ヨコハマ未来創造会議」。さまざまな人と繋がりながら、新しい感性やアイデアで環境にやさしい生活や社会を目指す活動が、横浜から始まっています。
2024年12月21日(土)・22日(日)に開催された「FUTURE DEMODAY 2024」では、本格始動から約半年間の活動成果と今後の展開が発表され、若者たちの未来に向けた熱い想いや、多くの人と意見を交わしながら試行錯誤する様子がひしひしと伝わってきました。
ヨコハマ未来創造会議は、どのように立ち上がったのか?
活動を進める上で、大切にしている想いとは。
会議体が目指す未来のあり方とともに、推進メンバーに話を聞きました。

12月21日にパシフィコ横浜にて開催された「FUTURE DEMODAY 2024」1日目のピッチイベント ※12月22日は横浜ワールドポーターズにて展示イベントを開催
注目の一大イベントを機に、将来の社会に向けて行動するきっかけを。「ヨコハマ未来創造会議」立ち上げの経緯
2027年、横浜では「環共」をテーマに、環境と共生し、市民の皆様と共につくる国際園芸博覧会「GREEN×EXPO 2027」が開かれます。
「GREEN×EXPOは一過性のイベントではなく、未来の社会を変える大きなターニングポイントと捉えている。サステナブルなグリーン社会の実現に向け、『人々の環境への意識や行動は、2027年の横浜から変わった』と言われるような博覧会にしたい。」
そんな想いから横浜市は、未来の当事者である若者たちが、気候変動等に伴う地球環境の危機に目を向けて、将来社会を「自分ごと」と捉え、共に議論し、行動するきっかけを生むプラットフォームとして「ヨコハマ未来創造会議」を2023年に立ち上げました。

「FUTURE DEMODAY 2024」にてクロストークを行う分科会リーダーたち
はじめは市内の大学生や企業の若手社員を中心に参加を呼びかけ、活動をスタート。全体でのワークショップなどを通じて、自然・人・社会が共に持続していくために、若者たちが横浜の未来で咲かせたい種のアイデアをブレインストーミングしました。
その後、テーマ提案を行った若者が中心となって5つの分科会を立ち上げ、テーマの深堀りや実現に向けたアクションに取り組み始めています。
5つのテーマ
■ サステナブルツーリズムから考える新たな観光要素「(仮)シン・ヨコハマ」の発掘!
■ 生物多様性と文化多様性をもっと身近に考えられるアクションとは?
■ 横浜の海で植物が育てられたら?
■ 都会で自然と共存しながらメンタルウェルビーイングを高めるには?
■ フードサーキュラーを起点に子どもの可能性を最大化するには?
グラウンドルールは「With Youth」「For Our Planet」「Respect for Diversity」の3つ。未来に繋がる人とアイデアのプラットフォームとして、参加者それぞれが目指す未来を真剣に考え、議論し、アクションを起こしています。
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月に一度開かれる、全体ワークショップ。関連分野の実践者を招き、分科会の垣根を超えて全員でアクション推進やGX・脱炭素に関する知識をインプットしています
数十年先の未来に向けて、挑む仲間が集うコミュニティを
ヨコハマ未来創造会議の主役は、今の若者たち。未来に挑む若者同士が繋がり、アイデアや想いが繋がる場をつくることも、会議体の大事な側面の1つです。
ヨコハマ未来創造会議が目指すのは「GREEN×EXPO 2027」のその先の未来をサステナブルでグリーンなより良い社会にすること。
次世代を担う多くの人材が集い、自分たちの未来についてよく考え、想いを共有してアイデアを実現する推進力を生む。数十年先の未来を変えるには、そのような場やネットワークが必要不可欠です。
例えばヨコハマ未来創造会議の活動方針は「若者の声を聴きながら決めている」と、横浜市の黒柳さんは語ります。
「本格始動の初年度は、まず若者の想いと将来社会を『自分ごと』として捉えるプロセスを大事にしたいと考え、あってほしい横浜の未来に近づけるために実現したいテーマを参加者に提案してもらいました。
『With Youth』がグラウンドルールの1つでもあるように、若者が主体となって、彼らが他の世代やさまざまな立場の方と繋がり、交流しながら行動していくことを大事にすべきだと私たちは考えています」

参加者は150人に。ヨコハマ未来創造会議の広がり
実際、ヨコハマ未来創造会議には大学生からさまざまな業界の社会人など、組織の枠を超えて多様な人々が集まってきています。
「参加する皆さんは色んなバックグラウンドを持っていますが、その壁を取り払ってフラットに参加し、自由に意見を交換しています。とはいえ、必要なときにはそれぞれが持つ知識や経験を生かして、上手く役割分担をしている印象です」
と黒柳さんは言います。
また、今のヨコハマ未来創造会議は「アイデアにさらなる彩りが生まれ、推進力が高まっている」のだとか。
「2024年の活動を通じて、参加者は約150人まで増えました。横浜市内の施設が応援パートナーという立場で参加し活動場所等を提供してくださったり、各界で活躍される方々がメンターとして参加し専門的な助言をしてくださるなどの動きも生まれていて、活動の輪が徐々に広がってきています」
【参加者インタビュー】集まった仲間とサポーターとともに「多様性」を身近にするアクションに挑戦
ヨコハマ未来創造会議の参加者であり、分科会リーダーの井出さゆりさんに話を聞きました。

井出さんは横浜在住歴があり、現在の勤務先は横浜。ヨコハマ未来創造会議には、勤務先の代表に教えられて興味を持ったと言います。
「実は以前から横浜のコミュニティに顔を出していたのですが、若者とともに未来を考える『with Youth』というコンセプトや『Nature Positive』『GX』というキーワードは、これまであまり自分が関わってこなかったテーマだったんです。新しい視野を手に入れて、コミュニティも広げられるのではないかと思い、興味を持ちました」
そんな井出さんは、ヨコハマ未来創造会議で分科会を立ち上げ「生物多様性と文化多様性をもっと身近に考えられるアクションとは?」をテーマにチャレンジを行うことに。
「このテーマを提案したのは、横浜の特徴を考えたときに『生物多様性』と 『文化多様性』の2つのキーワードが浮かんだからです。個人的にも『多様性』は大事にしてきたテーマで、横浜の特徴を活かした取り組みをリーダーという立場でチャレンジしてみたいと思いました」
こうして立ち上げた分科会では、身近な生物と文化の繋がりを楽しく学び、生物多様性の保全につなげる機運醸成や多様な人と繋がるきっかけをつくるため「つながるYOKOHAMA 中区ナゾトキウォーク!」と名付けた、まち歩きイベントのパイロット版を実施しました。
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「ナゾトキウォークは、生物·文化の多様性を知ることができるスポットにまつわる謎を解きながら、まちを歩くイベントです。まずは生物多様性·文化多様性に関心を持つきっかけになればと思い、企画しました」
こうしたナゾトキウォークをはじめとする井出さんたちの分科会活動は、ヨコハマ未来創造会議に伴走する『GREEN×CAPTAIN(グリーン・キャプテン)』から賞を授賞しました。

左から、横浜市・山中竹春市長、井出さん、GREEN×CAPTAIN・秋元 真夏さん
「ナゾトキウォークに参加した皆さんからはイベント前後で言葉のポジティブな変化が見られましたし、GREEN×CAPTAIN賞をいただくこともでき、生物多様性と文化多様性を身近に考えられるアクションに多くの人の関心を得ることができたのではないかと感じています。
今後は他の地域にも展開できるように、運営者向けの実践ノウハウをまとめたハンドブックを作成したので、ぜひ、横浜市中区以外にもこのアクションを広げていきたいです」
自由とサポートの良いバランスが、参加者のチャレンジを後押し
活動全体を振り返って、井出さんはこう話します。
「分科会には、多様なバックグラウンドを持つメンバーがいました。まち歩きイベントには地域の協力が欠かせませんが、メンバーがそれぞれのネットワークや強みを発揮しなければ地域の方と繋がり協力を得ることもできませんでした」
また「活動は大変でしたが、ヨコハマ未来創造会議だからこそ、仕事と両立しながら楽しく進めることができた」と教えてくれました。
「分科会は、適度な自由度で居心地良くやらせていただけました。というのも、事務局の皆さんが私たちがやりたいことを『まずやってみなよ』と背中を押してくれた上で、活動を引き上げる機会を提供いただくなどしっかりとサポートしてくださったんです。
だからこそ大きなチャレンジに一歩踏み出せましたし、仲間にも出会えて『自分だけでやらなきゃ』とプレッシャーを感じることはありませんでした」

最後に井出さんに、ヨコハマ未来創造会議の今後に期待することについて伺いました。
「参加者は今、150人ほどですが、今後もっと関わる人が増えれば良いなと考えています。コミュニティの規模が大きくなるほど、私たちが探求するテーマに関心を持って一緒に行動してみようという人たちが集まってきてくれる可能性が高まると思うんです。
『ちょっと関心がある』『やってみたいな』と思っている人のもとに、私たちの活動が耳に入り、輪に入ってもらえるくらいまでコミュニティの規模が大きくなっていけば嬉しいです。そうすれば、私たちにできることももっと増えていきますよね」
「GREEN×EXPO 2027」を契機に、仲間をさらに増やしていきたい。ヨコハマ未来創造会議のこれから
「きっかけさえあれば、地域や社会をより良くするために何かしたいという若者は身近にいると実感しています」横浜市の黒柳さんは、そう語ります。
「最初はメンバーがなかなか集まらない分科会もありましたが、最終的にどの分科会も定員目安の10人をほぼ満たすまでになりました。
最初に活動を始めたメンバーのアイデアや行動に共感し、一緒に行動したいという仲間や応援してくれる人が徐々に集まってきたんです。こうして集まった人たちの熱量、知識、経験は、若者たちのアクションのさらなる推進力に繋がっています」
また、もともと意識が高い人ばかりが集まったわけではないものの、人との出会いや活動の機会を通じて、横浜への愛着や活動への熱量をより高めている参加者も多いとのこと。
学業や本業の合間を縫って、半年間で25回ものミーティングを重ねた分科会もあり「メンバーたちが想像以上に熱量高く分科会活動を進める姿にいつも驚かされている」と黒柳さんも感心する様子でした。
最後に、今後の活動についてもお聞きしました。
「若者たちの想いを未来にしっかりと繋いでいけるように、今後は企業や地域の皆様とも連携して、アクションをより具体化して広げていきたいと考えています。
また、この活動と、ここから生まれた成果を来る2027年のGREEN×EXPOで世界に発信することも見据えています。一人でも多くの方に、私たちの身近な行動とその積み重ねがサステナブルなグリーン社会の実現につながることを実感いただき、未来に向けて行動する仲間を増やす機会にしたいです」

「この取組を通じて、次世代の当事者である若者も地域や社会に参画することが当たり前になり、その新しい感性やアイデアを生かしながら、あらゆる世代の人たちが手を携えてより良い未来を共に創っていく、そんな社会づくりに繋がると嬉しいですね」
ヨコハマ未来創造会議から見えてくる、若者たちとつくる未来のあり方
次世代の当事者である若者の新しい感性やアイデアを生かしながら、世代や組織を超えて、より良い未来を議論する。そして、実際にアクションを起こし、より良い未来を共に創るネットワークを形成し、将来の横浜に繋げていく。
ヨコハマ未来創造会議が目指すのは、そんな社会の構図。そして今、このひとつのモデルケースが形づくられ始めています。
「Nature Positive」や「GX」といった大きなテーマに対しても、一緒に考えてくれる仲間やちょっとしたきっかけがあることで、身近なことに落とし込み、小さなチャレンジとしてアプローチできること。
そこには未来に向けたアイデアと行動力を持つ若者、それを支える大人が集まり、より良い未来を創る大きな力となること。
ヨコハマ未来創造会議は、未来社会を創るためのヒントを教えてくれました。これは横浜の貴重な財産であり、社会全体に影響を与える第一歩となっていくでしょう。横浜市と若者たちが描き、広めるこれからの未来の姿に、期待が高まります。
