ペットボトルを循環させよう

再使用エネルギー 循環型経済

毎日の暮らしの中で何気なく使っているペットボトル。飲み物を安全かつ衛生的に持ち運べる身近な存在ですよね。そんなペットボトルを「水平リサイクル」することで未来のあたりまえをつくるプロジェクトが動きはじめています。みなとみらい発“ボトルtoボトル”。みなとみらいという新しいものを生み出すエリアから挑戦するペットボトルの「未来のあたりまえ」とは?今回はペットボトルというとても身近、だけど大きな社会インパクトのあるアイテムからの未来づくりの物語をみなさんにお届けします。

ペットボトルを、今みたいに使えない未来がきちゃう?ペットボトル再生プロジェクト“ボトルtoボトル”とは?

まずはボトルtoボトルという取り組みについて少し詳しくお伝えしましょう。
ボトルtoボトルとは、使用済みペットボトルから新たなペットボトルに再生する「水平リサイクル」と呼ばれるペットボトルのリサイクル方法です。多くのペットボトルの原材料は石油からつくられるポリエチレンテレフタレートという樹脂が主流。この樹脂からペットボトルをつくる過程で出るCO2量と使用済みペットボトルから水平リサイクルでペットボトルをつくるCO2量を比べると水平リサイクルは約60パーセントの削減が可能。この先もずっと、ペットボトルがペットボトルとして循環するために、サーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みとしても有効です。

パシフィコ横浜に設置されている回収ボックス。だれにでもボトルtoボトルの取り組みが伝わるデザインです。

日本におけるペットボトルのリサイクル率は85パーセント*1。これは世界的に見てもかなり高い水準のリサイクル率ですが、そのすべてが資源として有効活用されているとは言えないのも事実です。リサイクルには廃棄物を新たな原材料にして使用するマテリアルサイクル、より付加価値の高いものに変えていくアップサイクルなどさまざまな方法がありますが、リサイクルした製品が再びリサイクルされず、ごみとして処理されるケースも多く、リサイクルのその先までを考える機会も少ないのが現状です。その点、ボトルtoボトルは至ってシンプル。ペットボトルをまたペットボトルにしようという試みであり、次のボトルの素材にするためにはきれいな分別が必要です。その手順は、

1、飲みきる(すすぐとさらにベスト)
2、キャップ・ラベルをはずす
3、わける

このシンプルな3ステップで完了。今回、みなとみらい地区ではじまったボトルtoボトル。正しくペットボトルを捨てるだけで手軽にサーキュラーエコノミーに参加できちゃう。そう考えるとなんだかわくわくしてきませんか?

実は浸透していないペットボトルの回収マナーを伝える。
一歩一歩ずつ意識の共有が「未来のあたりまえ」をつくる

2050年日本政府がかかげるカーボンニュートラルに向けて、環境省より全国各地に脱炭素先行地域が選定されました。これは2030年度までに地域の電力消費に伴うCO2排出ゼロなどを地域特性に応じて実現することをミッションとした地域のこと。2022年みなとみらい地区もこの脱炭素先行地域に選出、それにともない各施設とともに脱炭素の取り組みとしてボトルtoボトルへの挑戦ははじまりました。
さまざまな探索をへて、サントリーホールディングス株式会社、ecomate有限会社、J&T環境株式会社、協栄産業株式会社の協力のもと、今年1月から本格始動したみなとみらいボトルtoボトル。ペットボトルを正しく分別された状態で回収する、一見シンプルな取り組みですが、本格始動に至るまでどんな道のりがあったのでしょうか?

横浜市 脱炭素・GREEN×EXPO推進局脱炭素社会移行推進部カーボンニュートラル事業推進課担当係長 村尾雄太さん

村尾さん みなとみらいが脱炭素先行地域に選ばれ、地区内で資源循環の取り組みを進めていこうという検討を進めるなか、やはり廃棄物の課題が大きいということになりました。これまで各施設がそれぞれお金をかけて廃棄物処理に取り組む現状から、地区全体で取り組むことでコストの削減などメリットはだせないかと議論していったんですね。結果、どの施設でも廃棄物として共通に出るペットボトルが取り組むべき課題であるという結論に至りました。地区全体で一括回収のルートをつくることで効率よく回収もでき、さらにいま、状態の良いペットボトルは買い取ってもらえるということもあり、ペットボトルの回収費と差し引きで、無償回収することができるかもしれない。そういった調整を1年かけて行ってきました。

今回みなとみらい地区に設置された回収ボックスでは飲み残しの回収も可能。このひと工夫もボトルtoボトルの取り組みに生かされているそう。

昨年1月、みなとみらい地区に所在する37施設とともに1ヶ月間ボトルtoボトルの実証実験を実施。この経験とさまざまな気づきが今回のスタートにつながっているとも。

村尾さん まず、予想以上に参加施設が多かったことが実証実験の手応えでした。1ヶ月というチャレンジしやすい期間でもありましたが、たくさんの施設がぜひやりたいと手をあげてくれて、各施設でもサステナビリティやサーキュラーエコノミーに関する関心が高いということが改めてわかりました。

水平リサイクル可能なペットボトルを認知してもらうために回収できないものの提示もあらためておこなったそう。

平山さん 実際やってみてわかることも本当に多かったです。ペットボトル回収といいつつもペットボトルではないプラスチック製品がまざっていたり、異物の混入も多かったです。家庭ではペットボトルを洗ってラベルをはがして、キャップをとってという作業は一般化されていますが、いざ施設や不特定多数の人が行き交う場所となるとやはり難しいと実感しました。
不純物があるペットボトルの回収袋はその施設に取り置きする運用だったので最初は回収量が半分に満たない施設もありました。ただ、取り置きを見てもらうことで、施設の方も意識やクオリティを上げていって最終的にはどんどん改善されていきました。
本格運用が始まりまだまだ課題はありますが、できるところから啓発していくしかない。いまは各商業施設へのポスター掲示やサイネージをつかって、一般の方も就業者の方にもこの取り組みを知ってもらい、少しずつ進めることが非常に大事だなと感じています。

一般社団法人横浜みなとみらい21 企画調整部 部次長・企画調整課長 平山美智雄さん

飲料業界団体の調査結果には、自動販売機横の回収ボックスにおける回収物の割合は7割がペットボトルや缶といった飲料容器ですが、残り3割はそのほかという結果もあるそう。そんな分別意識の低い現状もある中で、回収のクオリティーをあげる方法を常に模索しているといえます。

村尾さん 今年1月29日からみなとみらい地区等23施設が参加しボトルtoボトル本格運用がはじまりました。これにより、年間150トン、750万本を超えるペットボトルの水平リサイクルに取り組むことになります。
CO2の排出削減を進めていくことは、化石燃料に頼らない社会に変えていくということです。ペットボトルは手軽に衛生的に飲み物を持ち歩くことのできる便利な容器ですが、石油由来の原料から生産することは、この先難しくなっていくのかもしれません。これからもペットボトル容器を使い続けるには、使用済みのボトルを資源として大切に社会の中で循環して使っていくことが必要です。ペットボトルの水平リサイクルは、循環型社会に移っていくための取り組みの第一歩だと考えています。
水平リサイクル実現のためには、使用済みのペットボトルがきれいに分別されていることが必要です。家庭でも、外でもちょっと気にかけて3ステップの分別を徹底していただくことで、みなさまにもぜひ未来の社会づくりに参加していただきたいと思います。

地域と、そこに訪れる人と。みんなが一緒に取り組むことで、「新しいあたりまえ」を広げていきたい。

今年から本格始動がはじまったボトルtoボトル。実証実験から参加しているパシフィコ横浜、横浜赤レンガ倉庫1号館2号館の担当の方にもお話を伺いました。

(右)パシフィコ横浜(株式会社横浜国際平和会議場)
経営推進部 経営企画課 主任 土屋瞳さん (左)事業推進部 事業・安全推進課 小池和香さん

土屋さん ボトルtoボトルの実証実験にお声がけいただいた際は、パシフィコ横浜が地域全体の取り組みに参加できるチャンスと捉えて、まずはできるところからチャレンジしてみようということで参加を決めました。
実験がスタートする前は、飲み残しをきちんと捨ててもらえるか、回収作業がどのくらい負担になるかなど心配事も多かったのですが、結果的に大きな問題もなく実験を終えることができました。また、パシフィコ横浜では以前から清掃スタッフが手作業で分別を行っており、ペットボトル以外の混入がなかったことについて、実験後に横浜みなとみらい21さんから高い評価も頂きました。改めて、清掃や廃棄物処理に関わるスタッフの協力もあって実現できる取り組みだと感じました。

小池さん 今後は来場者のペットボトルをいかにボトルtoボトルにまわせるかが課題かなと思います。そのためには、飲み残しやラベル、キャップの分別など、まだまだ根本的な意識改革も必要だと感じました。ペットボトルの分別はもはや当たり前だという意識で世の中全体から変わるとわたしたちもより取り組みやすく、水平リサイクルは進んでいくと思います。

ボトルtoボトルのポスターを掲げて。(右)株式会社横浜赤レンガ 経営企画部リーダー渡邊陽子さん (左)営業部施設管理担当シニアマネージャー兼 横浜赤レンガ倉庫共同事業体 根本 淳さん

渡邊さん 横浜赤レンガ倉庫は2022年12月にリニューアルをおこなっているのですが、そのタイミングでサステナビリティの取り組みを強化いたしました。
2023年11月には横浜市SDGs認証制度(Y-SDGs)において最上位のSupreme(スプリーム)を取得しました。そういった流れのなかで、地域一体で取り組むボトルtoボトルのお声がけを頂き、参加に至ったという背景がございます。

根本さん 横浜赤レンガ倉庫では、これまでもペットボトルについては、廃プラスチックを燃やして発生する熱エネルギーを回収し、エネルギーとして再利用するサーマルリサイクルと、再生プラスチック原料として100パーセントリサイクルしていました。ボトルtoボトルに取り組むようになってからはこれまで以上にその質を高める努力をしています。お客様やイベント出店の方にも最初から飲料系のペットボトルとそのほかを分けてもらい、こちらで回収して可能な限り分別をしていますが、実態としては分けきれないものも存在します。

渡邊さん 地球環境と横浜赤レンガ倉庫を訪れるお客様は重要なステークホルダーと認識しており、横浜赤レンガ倉庫での事業活動を通じて持続可能な社会の実現を目指しておりますが、やはりいち企業の取り組みは影響力が限定的です。今回のように地域一体となった取り組みでは、ポスターなどお客様がこの取り組みに触れる機会も多くなるかと思います。本プロジェクトが、広く社会に浸透していくことが大切であり、サーキュラーエコノミーの実現に向けて大きく期待しています。

実際、ボトルtoボトルを実施して見えた風景。それは地域一体として取り組めることへの期待感。そしてこの取り組みに欠かせないこと、それはみなとみらいを訪れる人、もっと言えば誰しもがペットボトルを分別すること自体あたりまえだという社会になることが大切、そう伝えてくれました。

年間150トンというペットボトルを水平リサイクルする。想像もつかない量へのチャレンジですが、みなとみらいという新しいものを生み出す地区から、試行錯誤しつつもあたらしい未来の常識が動きはじめていました。

ペットボトルはきっかけ。未来の生活習慣を、一歩一歩みんなでトライしてつくっていこう。

SDGs未来都市に選ばれた横浜市を象徴するみなとみらいではじまったボトルtoボトルの挑戦。あらためて、みなとみらいでの挑戦の意義とそしてその先に広がる未来像について伺いました。

村尾さん 今回の取り組みでは、リサイクルの素材としてきれいに分別したペットボトルを確保することと、一括回収によるコスト削減により、無償でのペットボトル回収の仕組みづくりが実現しました。今後、リサイクル素材を求める社会の機運が高まってくると、使用済みペットボトルの価値が上がり、有償での買取が実現できるかもしれません。仮定の話ですが、買取で生まれた収益を元手にして、より多くのボトルを集める活動や、街の美化活動などに活かすことで、さらに地域のサーキュラーの取り組みが進むという好循環が生まれる可能性があります。

みなとみらいから未来のあたりまえを。

平山さん もともとみなとみらいは環境意識の高い方々も多くそれぞれが環境対策に関するさまざまな取り組みを行ってきました。
脱炭素先行地域に選定されたことで今回地区全体としてボトルtoボトルに取り組めることはとてもインパクトもあり、今後も発展的に継続できるようにしたいと思っています。

桜木町駅前広場やグランモール公園、汽車道・運河パーク、カップヌードルミュージアムパークなど、それぞれの組織が毎月巡回しながら、場所によっては100名以上の地区内施設のみなさまに参加いただき清掃をおこなっています。

村尾さん 間違いなく、横浜みなとみらい21さんを中心にエリアマネジメントの素地があったのでこのまちでボトルtoボトルができたという背景はあります。まちを美化しよう、環境対策を地区でやっていこうという地道かつ志の高い下地があったからこそ、今回のボトルtoボトルの公募も行政ではなくて、まちの主体的な取り組みとして実現できたというところに意義があると思っています。

「ボトルtoボトルはきっかけ」そう村尾さんは続けます。

村尾さん ペットボトルはきっかけです。これだけ大きなまちなので廃棄物は多く、当然それはうまく活用すれば資源、宝の山にもなりうると考えています。
横浜みなとみらい21さんはじめ、地域の方と対話しながら、他の品目についても資源として活用できないかと模索していきたいと思っています。
みなとみらいは、サスティナビリティについて感度が高い企業や人が集まる街なので、これからも地域のみなさまと様々なチャレンジをしていきます。そして、この地域で実現できたことを他の地域に広げ、より多くの市民の方に循環型社会づくりの取り組みに参加していただけたらいいなと考えています。

平山さん みなとみらいは今、開発的なまちづくりから、より価値の高いまちになるためのフェーズにきています。それは地区の関係者だけが意識を高く持ち、まちの価値を上げていくのではなくて、来ていただくかたも一緒につくっていくということが大事なんです。ボトルtoボトルを入り口に、自分もまちの価値、魅力づくり、ひいては未来のあたりまえづくりに参加しているということをシンプルに楽しんで欲しいです。

わくわくしながら未来のあたりまえをみんなでつくっていく。
「飲みきる」「キャップ・ラベルをはずす」「わける」、たった3つのステップですが、そこから広がる未来は間違いなくまちにも人にもポジティブな未来であり、大きな期待を胸にやってみる価値はあると思います。

まずはみなとみらい地区へ、遊びにいってみませんか?あなたのその手にあるペットボトルで、未来のあたりまえづくりの一歩を踏み出すことができますよ。

*1 PETボトルリサイクル推進協議会調べ(2023年度)

【情報】
ボトルtoボトル https://www.ymm21.jp/news/press/post_125.php

【参加団体(令和7年1月時点)】
横浜赤レンガ倉庫1号館・2号館
パシフィコ横浜
ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル
日本丸メモリアルパーク
横浜ベイホテル東急
ヒューリックみなとみらい
ニューオータニイン横浜プレミアム
横浜銀行本店
みなとみらい二十一熱供給センタープラント
一般社団法人神奈川県警友会 けいゆう病院
OCEAN GATE MINATO MIRAI
首都高速道路株式会社 神奈川局
横浜メディアタワー
リーフみなとみらい
みなとみらいグランドセントラルタワー/MMテラス
The Apartment Bay YOKOHAMA
横浜ブルーアベニュー
横浜野村ビル
村田製作所みなとみらいイノベーションセンター
横浜東急REIホテル
スカイビル
横浜シティ・エア・ターミナル
横浜駅東口地下街ポルタ

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