竹林から循環を生み出そう

循環型経済

いま、日本各地で「放置竹林(竹害)」が深刻な課題となっています。この課題に対し、一般社団法人横浜竹林研究所(以下、ハマチクラボ)では、放置竹林の幼竹を「メンマ」としておいしく加工し、有効活用する取組をはじめました。さらに、メンマ=食のアプローチだけではなく、さまざまな手法で「竹林整備から広がる循環」をテーマに新しい未来を生み出すアクションが広がりはじめています。

本来、竹と日本人は仲良し!?今求められる竹害への向き合い方とは?

古来より日本に自生してきた竹は、春には新芽を「たけのこ」として食材に、成長した竹は竹かごなどの竹細工や竹炭に加工されるなど、生活資材としても重宝され、日本人の暮らしに欠かせない存在でした。しかし、1960年代ごろから、安価な輸入たけのこの普及やプラスチック製品の多様化による需要の減少、竹林の管理不足などが重なり、竹が過剰に繁茂する状況が各地で見られるようになりました。
竹は地下茎(ちかけい)で、1年に数メートル単位で土地に広がっていきます。
管理されない竹林は周囲の森林や農地へ侵入し、広葉樹など本来の里山の植物を押しのけてしまいます。その結果、他の植物が育たなくなる、生物多様性が低下する、里山の景観や生態系が崩れるといった「里山の侵食」が進んでしまいます。こうした課題に対し、放置竹林を整備することで新たな資源や価値を生み出し、地域の暮らしそのものをデザインしようと挑戦しているのが、ハマチクラボです。

ハマチクラボ理事、若林拓哉さんが代表を務めるウミネコアーキがデザインのロゴ。竹や竹仕事という昔ながらの営みを伝統を感じる書体で表現しつつ、ハマチクラボという新しい試みをスタイリッシュに加えることで興味の入り口になったらという思いが込められているそう。

2023年春、ハマチクラボの理事であり不動産企画プロデューサーでもある山本ルリさんが、ある地主の方から竹林管理の悩みに触れたことがきっかけで、ハマチクラボの構想は動きはじめたといいます。

ハマチクラボ理事・山本ルリさん。不動産企画プロデューサーとして
不動産オーナーと伴走しながらプロジェクトを推進。ハマチクラボでは竹林整備の計画・企画を担当。

山本さん:活動のきっかけは、知り合いの地主さんから「裏山にたけのこが大量に生えて手に負えない」と相談を受けたことです。たけのこ掘りを手伝ったのですが、いくら掘っても、その旺盛な繁殖力にはとても追いつかず、収穫したたけのこをご近所に配っても、とても消費しきれる量ではなかったんです。

ハマチクラボのきっかけになった竹林。

山本さん:その地主さんの竹林があるのは、新横浜駅が最寄りの篠原町や岸根というエリアですが、もともと緑豊かな土地に、住宅や公園が整備されています。そのため、住宅街のなかには3000㎡未満の小規模な竹林が点在しています。こうした竹林はその所有者が整備の義務を負っています。現在、所有者が不明不在の竹林や、所有者の高齢化、担い手不足などにより、竹林所有者さんも手が回らず放置されているケースも増えてきてるんです。

高台にある竹林からは新横浜駅や高層ビルが望め、都市の一角であることを実感します。

竹林の課題に対して、ただ、“掘る”だけではなく、たけのこ掘り以外に消費してもらえる仕組みも構築すれば、竹林の整備も進むのでは?と考えた山本さん。やがて、幼竹(伸びすぎたたけのこ)をメンマに加工する純国産メンマプロジェクト*1の存在を知ったといいます。

山本さん:2mぐらいまで伸びた竹でも食材としてメンマに加工すれば大量の竹を食の資源として生かすことができる、これだ!と思いました。ただ、作るからにはちゃんと価値のあるものにし、より多くの人に届けたいという気持ちでした。

そんな理想を実現できたのは、現在ハマチクラボの代表理事を務めている小林隆志さんとの出会いがあったからだといいます。当時、小林さんは横浜市中区で家業だった惣菜店の味を引き継ぐメンマ料理を提供する一方で「純国産メンマプロジェクト」の活動を知り、国産メンマのポテンシャルを実感していました。その想いと山本さんの竹林整備の挑戦がひとつのものになり、ハマチクラボの立ち上げが進んでいきます。

2023年12月にハマチクラボが発足し、その翌年の2024年4月には、約450kgの幼竹をメンマ用として塩漬けにしました。さらに2025年には、地域コミュニティへの呼びかけも行い、整備する竹林の面積も増え、1t分の塩漬けを仕込んだそうです。
竹は1本あたり可食部が全体のおよそ半分のため、1tの塩漬けを仕込むには約2t分の竹を伐採・整備する必要があります。つまり、メンマづくりを通じて約2t分の竹林整備と資源化が実現したのです。

現在、ハマのメンマは横浜市中区山元町にあるカフェ「こころぷれいす」での直売やホームページからのネット販売を中心に(幼竹の収穫時期が限られるため在庫数が少ない場合あり)、地域のマルシェなどで販売されています。また横浜市内の企業とのコラボレーション企画も進行しています。横浜には18の区があります。その地域にゆかりのある産物を活かし、メンマにそれぞれの味付けを加えた横浜18区のご当地メンマ制作も構想中とのこと、横浜の色々な特色を生かした竹の食資源利活用にも期待が集まっています。

今年2月に開催されたメンマサミットin阿南市では、ハマチクラボからは横浜18区のご当地メンマのひとつである都筑区発ハマのメンマ「椎茸トマト」を出品。45袋限定の販売、試食は大好評だったそう。

竹を通じて、人がつながる!新たな竹林整備のあり方とは?

横浜発のご当地メンマ作りから始まったハマチクラボですが、現在はさらに一歩踏み出し、竹林整備を通じて、資源だけではなく、人も循環する活動へと発展しています。

山本さん:竹林整備や竹の加工は、年間を通じて作業があり、四季折々の中で人や地域をつなぐことができます。さまざまな立場や年代の人が集まり、地域住人と一緒に作業を行うことで、竹林の整備だけではなく、自治力の向上にもつながっているなと感じています。

また、近隣の神奈川県立岸根高校と協働し、町内の自治会の竹林整備依頼に対して、地域の課題を地域で解決するために、同校の生徒たちが力作業が必要な竹林の地下茎を掘り起こして、竹の住宅街への浸食を防ぐ作業などを担っています。
こういった取組からハマチクラボでは様々な作業を分割することで、あらゆる世代が担うことができる仕組みを竹林という場で構築し、竹林整備を効果的に進められるよう発展してきました。
さらに、秋から冬にかけては枯竹から竹炭づくり、竹炭は土壌改良に利用できるため、循環型の取組も生んでいます。

地域貢献活動「CLUB+1(クラブプラスワン)」の作業に参加する神奈川県立岸根高校部活動生の皆さんがハマチクラボに参加。取材の日はサッカー部の皆さんが伐採した竹を割って竹炭づくりを体験していました。

完成した竹炭は土壌改良の効果があることから農家や学校などに配布し、畑や花壇で活用されています。(アルミホイルの中身はご褒美の焼き芋です)

竹にホットケーキミックスを塗ってから炭火で焼くを繰り返して完成するバンブークーヘン。竹炭の火を生かしたおやつ作りも「美味しく食べて竹林整備」の一環であり学びです。

竹害から竹の循環型利活用の復活へ。サーキュラーエコノミーへの広がり

ハマチクラボの代表理事、小林隆志さんは活動の広がりについて次のように語ってくれました。

ハマチクラボ代表理事の小林隆志さん。母が営んでいた惣菜店の人気メニューであるメンマの味を受け継ぎ、2020年、家族で始めたカフェ「こころぷれいす」でメンマを使ったまぜそばが人気メニューとなったことを機に、国産メンマへの興味が深まり、やがて横浜発のクラフトメンマを構想するようになり、ハマチクラボ設立の大きなきっかけになったそうです。

カフェ「こころぷれいす」で人気のメンマまぜそば。

小林さん:竹林整備の入り口として「食」という要素は欠かせないと思っているので、メンマ作りは大切な活動のひとつとして位置付けています。ただ、これはアウトプットのひとつであり、あくまで地域の課題解決として地域循環型の竹の利活用を進めることがハマチクラボの役割だと思っています。そのため、雇用の創出や就労支援にも取り組んでいます。以前、関内の就労支援施設に通所する方々にメンマ作りの一部を体験してもらったのですが、竹を「切る・茹でる・塩漬けにする」という工程自体を楽しいと感じてもらえました。将来的には加工までを担う“拠点”となることも視野に入れています。

横浜の地で竹の利活用例を多く作ることで、他の地域のヒントになればと小林さんはいいます。

小林さん:私たちの目標は、竹害だった竹を余すことなく価値あるものに変えることです。竹の利活用を推進している仲間が全国にいるので、その事例も取り入れつつ、横浜の各地域で実践例を増やしていきたいですね。それが全国各地の竹林課題の解決につながる有効なヒントになればと感じています。また、その先には、農業、福祉、建材活用など、多様な展開も考えられると思います。

また、ハマチクラボの理事、若林拓哉さんは、現役の建築家の視点からこう語ります。

ハマチクラボ理事・若林拓哉さん(左)。一級建築士事務所 株式会社ウミネコアーキ代表。建築設計を軸に、企画・不動産・運営までをトータルに手がける。ハマチクラボでは、ブランドデザイン、グラフィック、プロダクトなど多角的なデザインを担当。

若林さん:わたしたちウミネコアーキの特徴のひとつとして、地主さんにコミットした仕事をしようという理念があります。その視点から見える課題に対してのアウトプットを生み出すことが活動の広がりにも繋がると感じています。そこには、地主さんの竹林整備という課題解決の中で、メンマづくりと並列して土地の利活用や建築提案のアウトプットがあり、なるべく多くの選択肢を提供したいという意図があります。ハマチクラボが人と竹林のあいだに立ち、人と人をつなぎながら、横浜という都市部だからこそ提案できる事例を、これからも積み重ねていきたいと思っています。

ハマチクラボが最初に竹林整備に取り組んだ横浜市篠原地区。そこを拠点にエリアリノベーションを推進してきた若林さんが、旧横浜篠原郵便局跡地を賃貸・改修した、文化複合拠点「ARUNŌ -Yokohama Shinohara-」は、ハマのメンマの販売拠点のひとつにもなっています。(季節や生産状況によって販売は不定期。)

理事の小林さんが営む中区山元町のカフェ「こころぷれいす」のショーウィンドウには、自慢のスイーツと共に「ハマのメンマ」が人気商品として並んでいます。(ハマのメンマは予約販売制)

竹を活かすこと=地域課題が地域の材に変わること

竹林整備から資源循環、さらには地域コミュニティの創出までを一体的に手がけるハマチクラボは、竹をサステナブルな暮らしを実現するための“具体的な資源”として捉えています。そして、「おいしく、楽しい未来づくり」という形で、暮らしに根ざした活用を提案しています。
竹を伐り、食し、加工し、土に還す。
その循環を地域の中で行うことで、竹が再び“なくてはならない存在”に戻っていく。
人びとの暮らしの中に自然と竹が息づく風景が戻ること。
竹林が管理され、資源として活かされ続けること。
そのひとつひとつの実践と竹との関わりが、私たち自身の暮らしのあり方も変えていくと確信させてくれました。
ハマチクラボが描く未来づくりのストーリーは、2027年1月30日、31日に開かれる第8回純国産メンマサミットでこの横浜から発信される予定です。乞うご期待ください。

*1 純国産メンマプロジェクト 純国産メンマなどへの利活用によって増加する放置竹林の資源化を図ることで、竹林整備及び森林の公益的機能の発揮に寄与することを目的とする国内唯一の全国組織。

【情報】
一般社団法人横浜竹林研究所 (ハマチクラボ)https://hamachikulabo.com/
純国産メンマプロジェクト https://www.japan-menma.com/

取材させていただいたのは...

一般社団法人横浜竹林研究所(ハマチクラボ)さん

STYLE実践のヒント

まずは竹林に入ってもらいたい。入ってみると気持ちの良さ、生命力の強さを感じます。 眺めている場所から入る場所としてワークショップなどに参加してもらうと竹が暮らしに近くなっていくのかなと思います。(小林さん) 竹といえば「筍」や竹細工を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、プラスチックが普及する以前、竹は日本人の暮らしに欠かせない素材でした。その背景を知ることで、自分の暮らしの一部としての竹を意識してみるとちょっと楽しくなりませんか?竹は、捨てるところがない。それがいちばんの魅力です。(山本さん)

STYLE100編集部

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