地球にやさしいハマスタをみんなで作ろう!
循環型経済
横浜のシンボル的存在である「横浜スタジアム」ー通称ハマスタ。
日本初の多目的スタジアムとして誕生し、プロ野球チーム横浜DeNAベイスターズの本拠地としても知られている本スタジアムは、毎年数多くの試合やイベントが開催され、多くのファンたちが訪れています。
そんなハマスタは、未来に向けて新しいアクションに挑戦しました。それは「地球にやさしいハマスタ」を目指して実施された観客参加型のゴミ分別。球場の枠を超え、スポーツ観戦そのもののムーブメントを目指した、これからのニュースタンダードになるような取り組みについてご紹介します。
ゴミの分別をさらにもう一歩先へ!観客参加型アクションで地球を笑顔に。
今回、ハマスタが地球にやさしいスタジアムになるために着目したのが「ゴミの分別」でした。
多くのファンのみなさんは観戦の際、場内での飲食も楽しんでくれています。その売り上げも、ハマスタにとって大きな収益の柱の一つとなっています。しかし、その裏にはゴミの分別という課題もありました。
株式会社横浜スタジアムの代表取締役社長である藤井謙宗さんにお話を聞くと、
「ハマスタには2015年から勤務していますが、ここ数年は気候変動による影響をとても強く感じています。特に夏は選手にとっても、観戦するお客様にとっても、厳しい状況になってきており、スポーツをする、観戦するという行為自体が体調不良を引き起こすこともあります。気候変動に対して、一人ひとりができることには限りがありますが、まずはごみの分別を通じて事業所や学校、地域で連携しながら取り組んでいけたらいいですね。それらをまとまりのある活動につなげ、大きなムーブメントにしていくことが、今、社会全体に求められていると考えています。」
と、今回のプロジェクトをスタートさせた想いを語られました。
また、本プロジェクトのリーダーである株式会社横浜スタジアムのボールパーク部長・上本勲さんはこれまでのハマスタのゴミ分別について、このように語ります。
「もともと、ハマスタはサステナブルなスタジアムを目指して、ペットボトル・プラカップ・ペーパートレイ・プラスチック・燃えるゴミの分別に取り組んでいました。一方で、観戦エリアで発生する、燃えるゴミに関しては十分な分別ができていないことが課題でした。ありがたいことに球場の観客数は年々増加しており、多くの方に場内での飲食をしていただいており、その分ゴミの量も年々増えていました。地球にやさしいハマスタの実現には、これまでの分別に加えて、燃えるゴミもいま以上に細かく分別し、資源化することが重要であると気づいたのです。」
現在、ハマスタに設置してあるコンコースのゴミ箱は、「燃えるゴミ」「プラスチック」「ペットボトル」の三種類。その脇にペーパートレーとプラスチックカップの回収ホルダーが設置されていますが、まとめて「燃えるゴミ」として捨てる方が多く、最終的にゴミの細かい分別は、毎試合後にスタッフが手作業で行ってきたのだそう。
「スタッフたちは、試合後にゴミ袋を一つひとつ開けて手作業で仕分けをしていました。燃えるゴミの中からペットボトルやプラカップを取り出し、プラカップやペーパートレーをまとめるだけでなく、飲み残しがあるペットボトルの中身をバケツに集めて廃棄したり、レモンサワーを提供していたプラカップに入っているレモンを燃えるゴミとして分別したり。時間もかかり、衛生上の注意も必要で、スタッフにとっても大きな負担となっていました。」と上本さん。
スタッフの作業負担が大きいままでは、サステナビリティの向上は困難です。そこで、今回挑戦したのが「観客参加型」でのゴミの分別だったのです。
ゴミの分別が、ハマスタの未来を変える!
ところで、回収されたプラスチックゴミやプラカップ、ペーパートレーなどのゴミは、具体的にどのようにリサイクル資源として活用することができるのかご存じでしょうか。
たとえば、飲み物を持ち運ぶペーパートレーは、汚れのない状態であれば段ボールなどにリサイクルできます。プラカップやプラスチックゴミは、細かく裁断された後、新たな資源となり、次の製品に生まれ変わります。また球場内の飲食店で発生する食品残渣などはバイオマス発電の資源として収集されており、ハマスタの廃棄物から発電した電力を買い取る取り組みを関係会社の協力のもと行っています。
このような大きな可能性を持った資源を、分別することなくまとめて燃えるゴミとして処理してしまっては、CO2の排出量を増加させ、地球温暖化の進行を抑えることはできません。昨今の地球温暖化は、ハマスタにも直接的な影響が出ており、これまで以上に問題視されるようになっているのだそうです。というのも、夏場の気温の極度の上昇や、ゲリラ雷雨などの異常気象のせいで、これまで通りに試合やイベントを開催できなくなっているケースも出はじめているから。これから先もずっと、今と変わらず試合やイベントを楽しめるハマスタであるために。ハマスタのスタッフだけでなく、観客やハマスタに関わるみんなの力を合わせることが、ハマスタの未来をつくる鍵となるのです。
みんなではじめる新習慣!
10月1日。この日は横浜DeNAベイスターズがクライマックスシリーズ進出に向けて負けられない試合。全国の野球ファンにとって見逃せない試合がハマスタで開催されました。ハマスタには多くの観客が来場し、大きな賑わいをみせました。そして、この日に、ハマスタは新しいアクションに挑戦しました。観客とスタッフが一丸となって、これまでとは異なるゴミの分別に取り組み、ゴミ分別の意識改革の第一歩を踏み出したのです。
今回は、試合のイニング間にスタッフが二人一組で球場内のスタンドを巡回し、ゴミの分別を呼びかけ、回収を行いました。それぞれが手に持っているのは、青色のゴミ袋と白色のゴミ袋。青色では「プラカップ」「プラスチックゴミ」と、白色では「ペーパートレイ」「燃やすゴミ」を回収します。場内を回る際にも、スタッフは
「プラカップを回収します!」
「ペーパートレイはこちらにお願いします!」
とこまめに声かけをしながら、回収を行いました。
さらに、コンコースのゴミ箱横にもスタッフが待機し、試合前と試合後に
「ゴミの分別にご協力ください!」
と声をかけながら、ゴミ分別のサポートを行いました。一つの袋にゴミをまとめてしまっていると、分別は面倒に思ってしまうもの。そんななかでも、根気よく呼びかけを行い、分別を促すことで、少しずつ観客のみなさんも理解しながらゴミを捨ててくださっているようでした。
実際にゴミ回収を行ったスタッフに話を聞いてみると「お声かけをすることで、すぐに分別に協力してくださるのが嬉しかった」「みなさんゴミ出しや分別に積極的で、回収するのが楽しく感じられた」と手応えを感じるスタッフも多くいました。そのほか
「ゴミをコンパクトにまとめてくださっている方もいて、それをお願いして分別してもらうのは気が引けた」
「座席の列ごとにリレー形式でゴミを集めてくれる流れが自然と生まれ、感動した」
などという気づきもありました。
普段は意識することなく捨てているゴミを、「これは何ゴミだったかな?」と改めて確認し、自分で考えながら分別する。さらに、周りの人とも協力しながらゴミを分別して回収する。小さなことでも、多くの人がアクションを起こすことで新しい流れを作るきっかけとなった今回の取り組み。試合後のゴミの仕分け作業はかなり短縮され、スタッフの作業負担も軽減されたようです。ハマスタに関わる人みんなの力で、サステナブルで地球に優しいハマスタの実現に一歩近づくことができました!
横浜からつくろう!スポーツ観戦のあたらしい形
実際にゴミの分別に参加したスタッフからは、新しい課題やアイデアもたくさん寄せられました。
たとえば、
「ゴミを集めるのが楽しくなるような、エンタメ性のあるゴミ袋があったらいいんじゃない?」
「声かけをするスタッフも、ゴミを捨てる人も、気分よく過ごせるような仕組みを作りたい!」
「どれくらいの量のゴミが集まったのかなど、数字などもわかると説得力があるかも」
などなど。
今後も継続的にゴミの分別に協力してもらうために、スタッフもこのアクションと真剣に向き合います。
上本さん曰く、脱炭素社会の実現のためには、スタッフ、職員や観客に限らず、さらに多くの人の協力が必要になってくるはずとのこと。
「今回は、ゴミの分別をメインに観客のみなさんに協力していただきましたが、脱炭素社会の実現のためにできることはまだまだあると思っています。たとえば、ゴミの分別のほかに、ゴミを減らすことも重要です。ハマスタの飲食店で出るゴミには、売れ残り(食品残渣)もあります。食品残渣は各店舗に協力してもらいバイオマス発電の資源としてコンテナに収集していますが、たとえば今後は、試合終了の少し前から各店舗に値引きを依頼して、なるべく食品残渣を作らないよう促すといったこともできるのではないでしょうか。また、納品の際に使用している段ボールを折り畳み式のコンテナに変えることで段ボールの削減に繋げることも可能になります。」
より効率的なゴミの分別と利活用のために、いずれは各店舗のカップやお皿などの素材の種類を減らす取り組みも重要であると語る上本さん。しかし、そんな中でも”楽しみながら”を大切にしたいとも強調しました。
新しいアクションに挑戦するハマスタですが、”どんな人も楽しめる場所であり続けたい”という思いは変わりません。ハマスタに来るたびに、少しずつ新しい気づきが増えたり、新しいアクションを起こすきっかけに出会う。そして、着実に、ストレスなく、脱炭素社会への取り組みが浸透していったらいいですね。今回のハマスタでの取り組みを今後も継続的に実施していくことで、ハマスタでの野球観戦のスタンダードとなり、いずれはスポーツ観戦のスタイルが変わるかもしれません。
ハマスタから、横浜から、地球にやさしいアクションを一緒に増やしていきませんか?